Take your Time,Take your Life

クラシックギター、ソロギター、カメラ、音楽、映画がすきです。

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『伊集院光とらじおと放哉と山頭火と』山頭火全集99円と

伊集院光さんのラジオが好きで、オーデカナイトから途中ブランクもありながらも、ずっと聞き続けています。『深夜の馬鹿力』は当然のこと、二年前から大沢悠里さんの番組を終了とともに始まった『伊集院光とらじおと』も出来る限り聞いています。

『とらじおと』には月曜から木曜にそれぞれコーナーがあるのですが、木曜日のレギュラーコーナーに「伊集院光とらじおと放哉と山頭火と」いうコーナーがあります。

これは自由律俳句の二巨人・尾崎放哉(おざきほうさい)、種田山頭火(たねださんとうか)の名にちなんだコーナーで、リスナーから寄せられた自由律俳句を数句ピックアップし、有馬隼人さん、柴田理恵さん、そして伊集院光さんがその句に対して「あーでもない、こーでもない」という感想をいうものです。

形式もなくつづられる寸句がゆえに解釈も様々で、例えば「終点」という言葉から、柴田さんは小田急線の終点の江ノ島を連想すれば、伊集院さんは意外にも不倫の末路を想像するなど、その名の通り、自由なことば遊びの極みみたいなコーナーになっています。

「あらゆる選択を間違えてここにいる」by 煮え湯500杯 さん

 

「次の角を曲がったら話そう」by くらのすけ さん

 

上は番組に寄せられた句の一部です。どうでしょうか、どんな心理、状況、情景が思い浮かぶでしょうか?どちらも味わい深く、ポジティブにもネガティブにも、悲劇にも喜劇にも読める名句です。

さて、この平成30年の日本中から寄せられるさまざまな自由律俳句、その歴史の中でも非常に人気があるのがタイトルにもなっている放哉と山頭火です。どちらもググるとたくさんの作品をみることができます。

「咳をしてもひとり」 放哉

 

「まっすぐな道でさみしい」山頭火

 

 このあたりがやはり有名でしょうか。寂寥感や孤独のなかにどこか諧謔的な響きを感じてしまいます。

 

そんなこんなで自由律俳句に少しずつハマり、やはり二人の句を多く読んでみたいなとうっすらと感じていたところ、目に飛び込んできたのがコチラです。

 

 

「種田山頭火全集68作品⇒1冊』kindle版

しかも値段は99円!

 

秒速でポチってしまいました。

 

もちろん自由律俳句を目当てに買ったのですが、山頭火の随筆や日記がまた面白い。表現や文学について大上段に構えて論じることもあれば、乞食をして日本中を歩き回ってるので、「今日は焼酎もらえたラッキー」「ここのやつらは冷たい」「人々の優しさがしみるぜ」みたいなことが綴られています。
 
いまブロガーやインフルエンサーといわれる人々は自分をブランディングするのにあれこれと策をつくしていますが、まさにそれをやっている感じです。人生の切り売りというか、むきだしの生というか。
 

iPhoneSEにいれて手のひらサイズで読んでいます。長編の読書もいいですが、こうした寸句の中に凝縮された悲哀、孤独、季節、情景、こころにふと思いをめぐらせてみてはいかがでしょうか。

勢いあまって『伊集院光とらじおと放哉と山頭火と』にも投稿してみました。読まれたらまた報告したいと思います。

映画撮影用フィルム Cinestill 50Daylight(シネスチル) を使ってみた

ビックカメラや新宿ヨドバシフィルム館でみるたびに気になっていたタングステンフィルム『Cinestill 50Daylight』を初めて使ってみました。

 

メーカーのオススメ文句によると

 

映画のワンシーンを切り出したようなイメージで撮影できます。
映画用デーライトタイプのISO50カラーネガフィルム。
現像は一般的なカラーネガ現像 (C-41) できます。

 

とのこと。

なんとなくこう、青ずんだ、北野ブルー的な感じで撮れそうな気持ちにさせてくれる。ワクワクする文言です。

 

ですが、 ご存知の方も多いと思いますが、このフィルム、35㎜で36枚撮りがなんと1980円~もします!

 

た、高い…高すぎる!

 

というわけで、ふだんなら絶対手が出ない感じなのですが、なんと荻窪の「さくらや」さんで特売品1620円が、さらに見切り品(消費期限が近付いているフィルム)になって1200円(税込み)で売られていたのをGETできたので、ついに使ってみました!

 

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 (もうちょっと待ったら1000円切ったりするのだろうか)

 

下の写真は小向マーケットから多摩川大橋の近辺に行った時に撮ったものです。現像はビックカメラのフォトコーナーに特別な注文をせずに出してみて、ネガの取り込みもビックカメラ(フジカラーCD)でやってもらっていました。

 

kentarot.hatenablog.com

 

すべてカメラはLeica M4、レンズはSummarit 50mm f1.5で撮っています。クセ玉なので参考になるかはわかりませんが、以下作例です。

 

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彩度はあまり高くなく、落ち着いた色合いです。

 

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絞って撮ったもの。多摩川大橋の鉄骨の質感などはそれなりに出てるように見えます。

 

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川べりで遊ぶ少年たちを橋の上から。青の微妙なグラデーションはそれなりに豊かな発色に見えます。

 

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人肌はこんな感じです。(上に黄色い半透明の屋根があります) 

 

使ってみた感想としては、Summarit 50mm f1.5のようなオールドレンズと組み合わせると、ポワポワした画になりすぎて、ちょっと眠いかなーといった印象です。

この日は風が強く空気も澄んでいてビックリするくらいの晴天だったので、光量不足の心配はありませんでしたが、このフィルムはなにせiso50。天気によっては使えるシーンがだいぶ限られてしまうのでは?といったことも感じました。(夜用のiso800のタイプもあるので、また使ってみたいと思います)

映画っぽいとか、ドラマチックな絵になるといった印象も、正直なところあまりありませんでした。もう少し現代的なレンズと組み合わせて使ってみて比べられればと思います。また安く手に入れることができればですが。

 

 

ノエル・ビリングスリーさんリサイタル @アイゼナハホール

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ノエル・ビリングスリーさんの演奏会に行ってきました。こちらは昨年のスペインギターコンクールの優勝の副賞として開催されたものです。二日前には日本・スペインギター協会(下記)主催でスペイン大使館での演奏会もあったのですが、ちょっと仕事の都合で間に合わなそうなかったので、こちらにうかがうことにしました。

 

 

ノエルさんは大阪育ちで中学生からバンクーバーに留学。15歳からエレキギターを独学で始めたのちにクラシックギターに転向し、ロンドンのトリニティー・カレッジ・オブ・ミュージックで研鑽を積まれました。現在は奥様の出身地の沖縄に移住し、沖縄を中心に活動されています。

スペインギターコンクールの前年にはクラシカルギターコンクールでも優勝し、その前年には日本ギターコンクールにも優勝。まさに勢いに乗っているギタリストのひとりです。

ソロのフルコンサートを聞くのは初めてだったのですが、包容力のある音楽と骨太の音でとても心地よい演奏でした。技巧的な曲をバリバリ弾くタイプではなく、音楽の大きさで魅せるタイプの演奏家に感じられました。

特に印象的だったのがブリテンの「ノクターナル」の最後です。ギターを聞く人にはとても有名な曲で、第八変奏には「ドシラソファミ」という下降が執拗に繰り返され、緊張感が凝縮していくパッサカリアがあります。

こちらは処刑台での公開処刑をモチーフにしているといわれています。半ば狂気に満ちたテンションの高まりののちに死(断頭)がやってきて、ダウランドの「来たれ深き眠り(Come Heavy Sleep)」のテーマによる救済がもたらされるという美しいシーンです。

 

 (こんな歌です)

 

コンクールで若手のギタリストによってもよく弾かれるこの曲。多くの演奏家がこの第八変奏での息詰まる感じと、そののちのダウランドのテーマのとのコントラスト(生と死の対比)を際立だせる表現をしていて、それも非常にまっとうな解釈だと思います。

しかしノエルさんはここを非常に抑制のきいた、緊張させすぎない演奏していて、これが僕にはとても新鮮に感じられました。なんというか、生と死が対立するものではなく、死があくまで生の延長線上にあり、いわば日常の一部であるという表現に感じられたのです。

ご本人に確認したわけではないので、どういう解釈で演奏をしているのかはわかりません。ただ、20代、30代、40代…と死生観の変化が演奏の影響があるような気がして、年齢をある程度かさねた演奏者によるノクターナルをいろいろと聞いてみたくなりました。

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(演奏後にちょっとだけ撮らせてもらいました。Leica Q/Summilux 28mm f1.7)

打ち上げはホールそばの神保町の中華料理屋で。ギターの話から沖縄の話から、いろいろうかがって楽しかったです。こんど沖縄のFMで5分ほどの番組をやられるとのこと。東京でも聞けるんでしょうか。

 

プログラム
・第一部

A.タンスマン バルカローレ
J.ロドリーゴ ヘネラリーフェのほとり
F.タレガ   アルハンブラの思い出
E.グラナドス アンダルーサ
F.ソル    魔笛の主題による変奏曲
J.トゥリーナ セビリアーナ

・第二部
B.ブリテン  ノクターナル
M.テデスコ  タランテラ
G.サンス   パバーナ
I.アルベニス アストゥリアス

<アンコール>
ロンドンデリー・エア

 (アンコール曲はお父様の母国にちなんでのことでした。武満徹編ではないシンプルなアレンジがしみました)

 

来年3月にはノエルさんの演奏会を企画しています。こちらも楽しみ!

 

『戸田真琴×福島裕二 写真展』で圧倒されてきました

渋谷ギャラリールデコで開催されている「戸田真琴×福島裕二 写真展」に行ってきました。


結論から言うと、圧倒されました。


写真が好きな人、特にポートレートを撮る人は絶対に見に行った方がいいです。
そして圧倒されてください。

福島裕二さんとの出会い 

camp-fire.jp

福島裕二さんは活動歴27年、最近ではこちらのクラウドファンディングで、モデルの戸田真琴さんとコンビを組んで大成功をおさめられた写真家です。支援金をもとに今年1月に開催された写真展も大反響で、ちょうど見に行った友人が「感動した」と言っていたことから、どんな人かと関心を持ち始めました。(ちなみに支援総額5410000円はCamp-fireの「アート・写真」カテゴリで歴代3位、写真集を作るという趣旨では1位になっています)

写真集のモデルの戸田真琴さんは「まこりん」という愛称で呼ばれているAV女優さんで、映画にも造詣が深く、マルチに活躍されています。ジム・ジャームッシュの『ミステリートレイン』というメンフィスを舞台にした映画にインスパイアされ、かの地で写真を撮ってもらいたいとの彼女の願いにこたえたのが、デビュー当時から写真を撮っていらした福島さんでした。


撮影された写真は『戸田真琴写真集 The light always says』としてまとめられ、クラウドファンディングのリターンとして支援者のもとに届けられ、今は一般販売もされています。


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(左は福島さんが共著で参加されている写真テクニック本)

僕はこの第一回目のクラウドファンディングの存在は知らず、写真集を見るにとどまり、写真展の開催も知らなかったので、当時は実際の写真を拝見する機会を得るまでには至りませんでした。

しかしながら、何が出会いをもたらすかは分からないもので、僥倖とでもいうべき巡り合わせから、福島さんにお会いする機会がありました。そのおりに3時間以上にわたり写真論、ポートレートとは何か、などを多岐にわたってお話しくださり、その圧倒的な技術力と表現者としてのスタンス、そして写真にかけるパッションに打たれ、趣味として写真を撮っているものとしては、もう一気にその人物に惹きこまれていったのです。

 

そして今回の6月のアンコール展示のお話についてもうかがい、いよいよその日がやってきました。

 

 ギャラリールデコへ

 

出発前にTwitterを見ると、嬉しいことに福島さんが在廊してるとのこと。やった!というわけでえっちらおっちらと渋谷のルデコギャラリーにうかがいました。

 

渋谷のギャラリールデコはJR渋谷駅の新南口を出て徒歩1,2分のナイスロケーションのビルにあり、1階には写真学校が入っています。

ledeco.net

展示は4,5,6階を貸し切っての大規模のもので、ひとりの写真家がひとりのモデルのみでこれだけの規模で展示をやるというのは、かなり稀なのではないかと思います。(じっさい福島さんによると、東京でこれだけの展示が見られるのは類がないとのことでした)

4階で受付を済ませると福島さんがいらしたのでご挨拶。さっそく壁一面に貼られたおびただしい数のポートレートを見ました。

 

どれも表情が生き生きしていて、まこりんこと戸田真琴さんの目には信頼が宿り、仲の良いカップルの彼氏が彼女を撮ったようなポートレートだと最初は感じました。

僕も写真好きで、おそらく年に数十回は写真展を見に行っているので、勘のいいモデルさんと高い技術(コミュニケーション力も含む)をもった写真家の化学反応が、こういった写真を生み出すことは、わかっているつもりでした。

 

しかし、写真を次々と見ていくにつれて、そこには彼氏彼女のようなある種の危うさをはらんだものではなく、もっと大きな信頼というか、愛情のようなものが写っていることに気づきました。

モデルのまこりんも、レンズを見返すというよりは「身を委ねている」ようなたたずまいです。とにかくなんの壁もへだたりもない写真でした。

それは親が子供を見る時の愛情のようなものなのかもしれません。こちらのインタビューでも福島さんは「根底にあるのは人類愛」という言葉を口にされていました。

 

genkosha.pictures

 

4階を一周して「おれはいますごいものを見ている」と思いつつ、次はいよいよ5,6階です。4階ですでに衝撃を受けたことをお伝えすると、福島さんは「辛くなったら戻ってきていいよ」と言われました。

「辛くなったら?」と思いましたが、趣味であれ、写真を撮っている人間として打ちのめされるよ、という意味でした。

『戸田真琴写真集 The light always says』でアシスタントをつとめていらした「ゆりちゃ」こと大村祐里子さんもこんなふうにつぶやいてらっしゃいました。

 

 5階と6階で待っていたもの

そして階段をのぼって5、6階へ。

この上層が本当にすごい。

どう「すごい」のかは言葉で表すのは難しいです。

B0版(だいたい1.5メートル×1メートルだと思ってください)に引き延ばされたポートレート群です。

ぶわっと世界が広がる感じでした。

 

皺から、うぶ毛から、眉毛の剃り跡まで鮮明に見ることができます。

そして表情には4階の写真群と同じく信頼があふれ、撮り手の愛情が注がれているのが分かります。

 

そしてこのポートレートを見ていると、なんだかウルっときてしまうのです。

ポートレートを見てこんな感情がわいてくる経験が無かったので、本当にびっくりしました。

 

 

ポートレートでこんなことができるなんて! 

ただただ驚くばかりでした。

魂が震える経験というやつです。

幸いにも?次元が違いすぎて辛くなることはありませんでした。

「本当にすごいものをみてしまった」という喜びと興奮だけが残りました。

 福島さんは「人類愛」とおっしゃっていましたが、僕は戸田真琴というひとりの人間を通しての「人間賛歌」のように感じられました。なんだか書いてて恥ずかしくなってくるのですが、本当にそう思ってしまったのです。

 

福島さんからいろいろうかがったこと

4階に戻り、福島さんに味わった感動をそのままにお伝えし、写真についても出し惜しみなくお話ししていただけました。「出し惜しみなし」というのが福島さんのモットーとのことでした。なぜなら、いくら話を聞いたところで、マネできるものではないからということからでした。

 再現性のすごさに驚いたことについてもお伝えすると「こうきたら、こうなる。こうすれば、こうなる」というのがすべて見えている、ということをおっしゃっていました。プロとしては当たり前のことなのかもしれませんが、完ぺきなレシピと、洗練された技術に裏打ちされているのだということが、ヒシヒシと感じられてひたすら脱帽です。

 

ちょうど写真をやっている方がいていろいろ質問されていたので、いっしょにアドバイス的なお話もうかがわせていただきました。本当に丁寧にいろいろと話していただいたのですが、整理できていないので、覚えている範囲で書き記しておきます。

 

「思ったように撮れないのは、まずよく見ていない、見えていないから」

「表情の変化を予測しておく。モデルの表情がどう変化しても対応できるように」

「モデルの呼吸に自分の呼吸を合わせる」

「6つの目で同時にモデルを見られるように」

「とにかくどう撮るかということを考え続けることが大事」

「僕が写真で表現したいのは人類愛」

「本当にすごい写真を見たことが無い人が多いので、見る場、機会を増やしたい。そうすれば日本の写真のレベルはもっと上がる」

もう本当にいろいろとお話しいただいて多謝多謝です。ちょっとでも日ごろ写真を撮るときに活かせればと思います。

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日替わり写真集が販売されていたのでゲットしてサインもいただき、いっしょに写真も撮っていただきました!ありがとうございます!

『戸田真琴×福島裕二 写真展』は6/17までやっています!この機会をお見逃しなく!本当に見て欲しい写真展です!

 

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聖地巡礼 エレファントカシマシゆかりの地はEasy Go

聖地巡礼は意志をともなう

みなさんは聖地巡礼ってやつしたことありますでしょうか?

僕は訪れた先がたまたまドラマ『Woman』ロケ地(雑司ヶ谷)だったり、アニメの舞台(秩父とか沼津とか)になっていたことはあったのですが、それはいわば偶発的な聖地巡礼で、そんなものは聖地遭遇とでもいったほうがいいものでした。

聖地巡礼というからには、やはり確固たる意志と信仰心をもってなされなければなりません。そんなわけで今回は初めて、出かける前から「今日は聖地巡礼したるぞ」という強い志をもっていってきました。

 

巡礼地として選んだのは、昨年デビュー30周年の全国都道府県ツアーを終え、今も圧倒的なライブパフォーマンスで日本のロックシーンを刺激し続けているバンド、エレファントカシマシ(以下エレカシ)ゆかりの地、北区赤羽にある赤羽台団地周辺です。

 

 

いまや51歳になった彼らが出会ったのは、38年前の北区立赤羽台中学校1年6組のクラスメイトとしてでした。その後メジャーになった彼らは、高度経済成長期の象徴であり、幼き日の彼らが住んでいた赤羽台団地で「桜の花、舞い上がる道を」という曲のPVを撮影しています。

 

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このPVに出てくる坂はファンの間で有名な聖地とされています(いるはずです)。できれば、みやじ(宮本浩次の愛称)が立っていた黄色い石(車止め)のうえに立ってみたい!ということで巡礼の旅にでかけることにしたのです。

その場所を求めて

赤羽台団地はJR赤羽駅西口から徒歩5分くらいの台地の上にあります。駅を出て坂を上がると、かなり広い台地が広がり、何棟もの団地群が巨大な遺跡のように並んでいます。それぞれの棟には住人の方がすこしだけ住んでいるようで、取り壊されずに昔のままの姿を残していました。

 

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(Nikon fm3a/nikkor 45mm f2.8/Kodak potra 400)

団地は50くらいの棟からなり、1棟には50世帯くらいが居住できそうですが、現在、住んでいるのは1、2世帯のようで、団地全体のキャパシティにたいしてほとんど人がいない状況でした。(みやじが住んでた10号棟はすでに取り壊し済みとのこと)

 

ロケ地の坂を探して歩き回りましたが、道幅や手すりなどがちょっと違って、ハズレ続きです。それにしても、歩き回ってもすれ違うのは数人で、駅からほど近いのに異常に静かな空間でした。

休日の午後だというのに団地内の公園には人っ子一人おらず、昭和で時間が止まっているかのような錯覚を覚えます。住人らしき方との遭遇は、回覧板をポストに入れていたおじいさんくらいでした。

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(Nikon fm3a/nikkor 45mm f2.8/Kodak potra 400)


団地を歩き回ること40分ほどでしょうか。それらしき坂を発見しました!スマホyoutubeを見て、柵の形や木の生え方、アングル等を確認し、間違いないと確信。(PVの20秒あたりから出てくる坂)

 

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PVの中でみやじが立っていた黄色い石(車止め)が坂の下の方にあるはずなのですが、いくら探しても見つからず…引っこ抜かれて、あとを埋めた形跡を発見しました。どうやら、ちょっと前に撤去されてしまったようです。残念!

 

赤羽駅周辺散策

失意のなか団地散策を終えて、向かったのは「昔ながらの喫茶店友路有」(むかしながらのきっさてんとぅもろう)という純喫茶。こちらは赤羽駅東口にあります。

 

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メニューには「先代から味を引き継いだナポリタン」との注記が。ということは、きっとみやじもこれを食べたに違いない!というわけで、一も二もなくいただきました。ウマい!純喫茶はやはりナポリタンかエビピラフに限ります。ビバ昭和。

 

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食後は赤羽駅東口を散策。こちらはヤマハが全国的にやっている音楽教室で、10代のエレカシメンバーがスタジオ練習していたといわれています。きっとRCサクセションのコピーなどを一所懸命やって、キヨシローやチャボになりきっていたのでしょう(たぶん)。

 

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(Nikon fm3a/nikkor 45mm f2.8/Kodak potra 400)

腹ごなしに荒川まで歩いて水門を眺めたり、サイクリングロードを走る少年たちを撮ったりして最終目的地へ向かいました。

 

 純喫茶デア

駅前のアーケード街にある「純喫茶デア」。ここは若かりしエレカシメンバーがたまり場にしていたといわれている聖地オブ聖地のひとつです。こちらも「昔ながらの喫茶店友路有」と同じか、それ以上の昭和感ある店でした。(お店の人によると45年くらいやってるらしいです)

 

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初夏を感じる日差しのなかを歩いてきたので、アイスコーヒーの飲み初めをして、店内を見渡すと…

 

発見!

 

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はい。左下がみやじのサインです。ちゃんと「宮本浩次」と書いてあります。そしてハービー山口さんが撮ったと思われる写真と一緒に額装されていました。

1998年というから、ちょうど20年前です。エレカシの大ヒット曲「今宵の月のように」が世に出た直後くらいでしょうか。(「北区赤羽」の関連で山田孝之も訪れていたようです。)

 

お店の方に許可をいただいて撮影し、みやじたちがよく陣取っていた席を教えていただきました。残念ながらその席はほかのお客さんで埋まっていて、案内されたのは隣の席。でも、ちょうどそのお客さんたちが楽し気に話している姿が、メンバーがガヤガヤやってるいるような気がして、何とも言えない、いい気分になりました。

 

赤羽台団地は駅から近くてEasy GO。ぜひぜひ足を運んでみられてはいかがでしょうか。

 

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1枚の写真も発表しなかった写真家 ヴィヴィアン・マイヤーにあこがれて

ヴィヴィアン・マイヤーという人を知っていますか?ヴィヴィアン・マイヤー(1926-2009)は、アマチュア写真家として10万枚以上のフィルム写真を撮影しましたが、それらを1枚も発表することなくその生涯を終えた女性です。

死亡する2年前の2007年に、借りていたレンタル倉庫の維持費を支払うことができなくなり、その中に保管されていた夥しい数の未現像のフィルムがオークションに掛けられました。

落札したのは20世紀のニューヨーク文化を調べていた収集家のジョン・マルーフ。1950年代のニューヨークの様子が収められているフィルムが、半世紀以上の時を経て現像されることになりました。

そしてちょうど10年前の2008年6月にマルーフがヴィヴィアンの作品を写真投稿SNSのFlickrに公表したことから、ヴィヴィアンは「発見され」、一気に世界に知れ渡ることになります。

 


このオークションも倉庫の管理会社が中身を処分するために開いた、いわばガラクタの処分市みたいなものだったといわれています。マルーフはその中に埋もれていたフィルムをたまたま手に入れただけだったのです。

写真を見たマルーフはそのクオリティに驚き、検索するも何の情報もでてきません。なぜならヴィヴィアンは偽名まで使い、人とのかかわりをなるべくもたないように生きていたため、その生の痕跡がほとんど残されていなかったからです。

ヴィヴィアンは内向的で、人付き合いもあまりよくない偏屈な女性だったといわれ、ベビーシッターの仕事で得られるわずかな賃金を得て、孤独な生活をしながら、発表をすることもなく写真を撮り続けました。友達がいた気配もなく、家族と呼べるような人もおらず、結婚もしていませんでした。

彼女は蒐集家というか、モノが捨てられない性格だったようです。新聞を捨てられずに部屋の片隅に積み上げ続けていたり、チケットの半券をずっと保管していたようで、こうしてーー僕らにとって幸いなことにーー膨大なフィルムも残されることになりました。

のこされたわずかが手掛かりをもとに、マルーフはヴィヴィアンの遺したフィルムをさらに買い集め、少しずつ公表していっています。このマルーフによる数奇な発見と運命はドキュメント映画にもなりました。

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現像せずに、発表もせずに、ただひとつのレンズとなって写真を撮り続けたヴィヴィアン。承認欲求にがんじがらめにされ、「いいね」の海にどっぷりとつかって右往左往するわれわれとは対局の生き方。その生は、ひょっとしたら現代においてこそ、よりその輝きを増していくのかもしれません…彼女の写真がまさにSNSによって拡散され、日の目を見ることになったことは皮肉ですが。

 

ローライフレックス

ヴィヴィアンが主に使っていたのはローライフレックス製(カメラ好きにはローライという愛称で呼ばれています)の二眼レフ(ピントを合わせるレンズと写真を撮るレンズがあるので二眼)で、この映画を見て僕もボロッちい中古のローライを買ってしまいました。

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「ローライフレックススタンダード」というカメラで、型番からすると1938年製。まさにヴィヴィアンが生きていた時代からあるカメラです。専用のケースがついて30000円弱でした。

ピントレンズはちょっと曇っていますが、テイクレンズはそこそこキレイで、何よりも80年の時を経てちゃんと動きます。1938年と言えば、ヒトラーがオーストリアを併合したりして、ヨーロッパの覇権争いが激化していた年ですが、これが当時のドイツの技術力の高さなのでしょうか。

 

写真集

そして、ヴィヴィアンの写真集も買ってしまいました。このご時世、探せばネットでいくらでも写真を見ることは出来ますが、やはり紙に印刷されたもので写真を見るという体験は何物にも代えがたいものです。

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ヴィヴィアンの写真集はいくつか出版されていて、神保町の写真集が豊富な古本屋や書店で立ち読みしましたが、Herper Designから出版されている"Vivian Maier: A Photographer Found"がオススメです。タイトルはfinding(探す、求める)とカメラのfinderにかけてあるのかもしれません。

タテ32.5cm、ヨコ27cm、厚さ3cmという、鈍器に使えるんじゃないかというサイズですが、入手できるものの中では作品数が多く、プリントもきれいです。ばったり出会ってとっさに撮ったのか、ピンボケしている1964年のオードリー・ヘプバーンの写真なども収録されていて、ちょっと微笑ましいです。


もし興味があったら、写真集と映画『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』をぜひ見てみてください。そしてこの数奇な写真家の運命と、その生のもつ意味に思いをはせてみるのも面白いかと思います。

なにより、こんなすごいことが実際あるんだなーとビックリします。もしかしたら第二、第三のヴィヴィアンが、今日も誰に知られることもなくシャッターを切り続けているのかもしれません。

(下の写真はローライを買ったばかりの時に撮ったもの)

 

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(Rolleifrex standard,fuji neopan across 100)

川崎のレトロスポット「小向マーケット」で写真を撮るのは楽しい

1953年

川崎にある巨大な東芝工場(株式会社東芝 小向事業所)の近くにある「小向マーケット」という小さい商店街に、カメラ仲間とフィルム写真さんぽにいってきました。
こちらは「香ばしい街並みブログ」というノスタルジックな街並みを紹介している素敵なサイトから情報を得て知ったのですが、想像にたがわぬいい写真スポットでした。

小向マーケットは昭和28年(1953年)に作られたかなり年季の入った商店街です。
1953年と言えば、日本ではNHKや日テレの放送が始まり、あわせてテレビコマーシャルが流された年。映画ではオリジナルの方の『君の名は』が大旋風を巻き起こしていたようです。また、この年からスーパーマーケットが各地に作られたと言われています。

 

アクセス

アクセスとしてはJR南武線の「鹿島田」駅から歩いて約25分。けっこうな歩きでがあります。バスでも行けるのですが、ランチを食べようと鹿島田駅近辺を少し歩いてみたところ、昔の街並みが少し残っているようなので、僕たちは写真を撮りながら目的地に向かいました。

 

 (JR「川崎」駅の西口にある「川崎ラゾーナ広場」から「小向」停留所まで、バスが出ているそうなので、こちらでも行くことができます。こちらは所要時間7分)

 

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道中、昭和な感じの美容院など、味のある家屋や建築物などがあったので写真を撮っていたところ、「何しに来たの?」と話しかけてくるおばさまが。昔の街並みが残っているということで、写真を撮りに来た旨を伝えると、「ときどき、そういう人が来てるわよー」とのこと。こういう現地の方々とのスモールトークもカメラさんぽの醍醐味です。写真を撮り撮り歩いて約45分ほどで到着しました。

 

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外装がトタンでできた20メートルほどの2棟の木造長屋の間に、薄黄色い半透明のトタン屋根が渡され、写真のような、小さなアーケード街になっています。


道幅は3メートルもないくらいで、見上げると当時は鮮やかであったであろう万国旗が、色あせた姿で垂れ下がっています。半透明の屋根からは柔らかな光が差し込んでいて、ストリートポートレートを撮るにも面白いスポットです。

 

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もとは20店舗くらいがあったそうですが、今は4店舗しか営業していないようです。
しかも写真を撮りに行った日曜日は休業日でした。全店舗シャッターが下りていたのは残念でしたが、おかげでゆっくりと写真を撮ることができました。金属製のシャッターではなく、昔ながらの木戸がおりているお店もありました。

 

フィルム写真さんぽということで、最近メインに使っているLeica M4に、年始にゲットしたSummarit 50㎜ f1.5をつけて撮り歩いてきました。(ちなみにこの近所に巨大なBOOK OFFがあったので中古カメラを見に行ったのですが、ジャンクも含めてあまり数多くはなかったです)。

 時が止まったかのような場所で、通りがかったおばあちゃんや少女とお話ししたり、写真を撮らせてもらったりしました。地元の住人の方々が生活道路として使っているようで、僕たちが滞在した1時間ちょっとの間でも、10数人くらいの地元の人がマーケットを通り抜けていきました。伺った話によると、こちらもときどき我々のような人が訪れたり、テレビの取材が来たりしているとのことでした。

 

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ここからだと多摩川を渡って歩いて神奈川から東京へ帰れそうだったので、日の傾き始めたなか多摩川大橋を渡り、京急多摩川線の「矢口渡」駅から帰路へ。昭和の雰囲気が色濃く残る小向マーケット周辺、写真さんぽには超オススメです。